太田胃散

スプーン通信

「和のこころとからだ」

第一回目『胃腸にやさしい日本料理』

Q1:日本を代表される料亭の瓢亭さんですが、その歴史を少し教えてください。

はじまりは今から450年ほど前からと言われていますが、南禅寺へ参拝される旅の方が立ち寄られお茶を飲まれたり草鞋を履きかえられたりする場所としての茶店から始まったと言われています。その後、天保8年(1837)8月15日にお食事を提供する料亭として立ち上がりました。一組ずつ対応をしていたことから、一棟一棟で対応をしてお茶を出す形となり、お茶に伴なった懐石料理を出すようになりました。

Q2:瓢亭たまごは有名ですが、滋養強壮の富む卵にはやはりこだわりをお持ちでしょうか?

色々とこだわりはあります。基本的に我々はお店の外でもイベントなどに参加しておりますので、その現地で求める際には現地の人々になじみのある卵を選ぶようにしています。また名物の瓢亭卵を作るときは、安定して提供できるように大きさからゆで方など気を付けています。

「瓢亭」15代主人 髙橋義弘氏

「瓢亭」15代主人 髙橋 義弘氏

Q3:昨今、和食が人気を博していますが、髙橋さんが和食の料理人として大事にされていらっしゃる事はどのような事でしょうか?

私共の店はやはり伝統的な店としての形がありますので、そのルーツを大事にして存在意義を意識しています。無理に変えるとか変えないとかではなく、やっていくうちに自然に変化していけばいいのではないかと捉え、時代の流も感じ取っています。料理は、時代により好みも変化しますので、瓢亭としての基礎はそのままにしながら、変化をすることもあります。

Q4:和食には出汁(だし)が大事とお聞きしていますが、出汁はどのようにお使いですか?

うちの店は、マグロ節を使用しています。これは料理屋の中では珍しいのですが、うちの店はマグロ節のみを使用しています。他店ではよく鰹節にマグロ節を混ぜられることが多いので特徴的と言えると思います。これは父親の時代から変えたものですが、それまでは鰹節を使用していました。それ以外にも料理により出汁も変えており、こだわりがあります。香りや味などのバランスに特に気を付けています。ちなみに、外国の方は、出汁や和食に対して哲学的な質問をよくされます。ヨーロッパの方、特にフランスの方は、熱心に質問をされるように思います。

Q5:五臓六腑にしみわたるという言葉がありますが、お出汁の利いたお椀物をいただくとそのように感じます。最近では「日頃、腸を健康に保つ事が、身体全体の健全に効果を発揮する。」とメディアでも話題になっておりますが、和食で胃腸にやさしい食べ物やお料理と言えばどのようなものが思い浮かびますか?

うちの店でいますと、おかゆです。おかゆに出汁餡をかけたのが胃腸にやさしいのではないかと思います。おかゆはある意味、日本文化を象徴した物とも言え、お米の質感、弾力性、香り、風味がダイレクトに感じられる食べ物です。通常うちの店では鉄鍋でおかゆを炊きます。それはとても美味しいですよ。ただ、おかゆは、ものすごく美味しいものではなく、しかし変わらず美味しい物であると私は思います。

Q6:髙橋さんがご自身でお食事を楽しみにされるポイントはどのようなところですか?

一概に料理だけではなく、その空間であったり、お店の人との掛け合いだったり、フォーマルだったりカジュアルだったりそのあたりを意識してお店に入ります。普段から和食だけではなく、イタリアンもフレンチも中華も行っていまして、そのお店ごとに楽しみを見つけています。

「瓢亭」15代主人 髙橋義弘氏

「瓢亭」15代主人 髙橋義弘氏

「瓢亭」15代主人 髙橋義弘氏

「瓢亭」15代主人 髙橋義弘氏

Q7:ご多忙な髙橋さんはご自身のストレス解消法はどうされていますか?

基本美味しいものを食べにいくことです。料理と違うところで影響を受けることもストレス発散になっていると思います。解消するためにしているのではなく、その刺激が楽しいからしているという感じでしょうか。能なども見るのが好きであの空気に吸い込まれる雰囲気を楽しんでいます。

Q8:思いで深いお料理とはどのようなお品でしょうか?その理由をお聞かせ下さい。

修業時代の「まかない」でしょうか。色々と思い出しますが、先日、修業時代にお世話になった先輩のお店に伺ったのですが、お料理をいただくと、当時教えていただいたことがよみがえり、なおかつ先輩の仕事がここにあるんだと思うと、包丁技からなにもかも感激しました。料理は人と人を繋げるものでもあり、その人を表すものではないかと思いますし、それが顕著に表れているものが思い出深い料理となっていくように思います。

Q9:和食を通じて読者の方に一言お願いします。

ともすれば和食は難しく考えられる方もおられますが、もともと日本人がずっと食べてきたもので本当は気楽なものなんです。料理にはこうしたら悪いということは一切ないので、どんな形でもお料理を継続していただければと思います。和食はユネスコ無形文化財に登録をされましたが、それは一つの危機感でもあります。これからどうなるかという事を投げかけられたように思っています。皆様にも「いただきます」「ごちそうさま」を忘れずにこれからも受け継いで行ってほしいと思います。

Q10:最後にお尋ねいたします。髙橋さんにとり「和食」とはなんでしょうか?

日本人としての一つの表れと言うか、「和食の和」は「なごむ」意味もあるので日本人の考え方を反映された食だと改めて私は思います。
本日はありがとうございました。

プロフィール

髙橋義弘プロフィール

京都 瓢亭  15代 当主
1974年、京都南禅寺に450年 続く老舗料亭「瓢亭」14代当主の髙橋英一氏の長男として生まれる。
大学卒業後、金沢の「つる幸」で3年修行を積み、99年帰洛。2015年4月に瓢亭15代 当主に就任。
日本料理アカデミー会員。国内外問わず活躍し、京都の懐石料理を通し食育にも力を入れている。

京  南禅寺畔  瓢亭
京都市左京区南禅寺草川町35
  075・771・4116
  本店11:00~19:30L.O.
  別館8:00~16:00(AMは、朝がゆ、うずらがゆ の時期のみ)
  第2・4火休(別館は木休)
  http://hyotei.co.jp/

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