太田胃散

スプーン通信

野菜が体によいといわれる理由

野菜ソムリエ/調味料ジュニアマイスター NPO法人青果物健康推進協会ベジフルティーチャー井上憲子さん

野菜ソムリエ/調味料ジュニアマイスター
NPO法人青果物健康推進協会ベジフルティーチャー
井上憲子さん

野菜ソムリエ/調味料ジュニアマイスター NPO法人青果物健康推進協会ベジフルティーチャー井上憲子さん

野菜は体にいいとわかっていても、なかなか毎日、十分な量を摂ろうと思うと難しいですよね。そこで、野菜ソムリエの井上憲子先生に、野菜の魅力や、健康を考えた野菜の食べ方の基本をうかがいました。毎日、たっぷりの野菜を摂るための料理法など、今日からでもすぐに取り入れられるヒントも紹介しています。

Q1 まず、井上先生が野菜ソムリエになった、きっかけを教えてください。

もともと料理をするのが好きで、結婚前からお料理教室に通っていました。そして結婚、出産を経て、日々のお料理をしていく中で、まずは野菜の勉強をしてみようと思ったのです。

Q2 井上先生が考える、野菜の魅力とはなんでしょうか?

何より、季節感を得られることだと思います。目で見るだけでなく、季節を体に取り入れることで、心身が健やかになりますよね。たとえば、ホウレンソウ。旬の冬場のホウレンソウは、夏のものより甘くてビタミンCが豊富であるように、旬の野菜は、それ以外の時期のものと比べて栄養価が高いのが特徴です。お店で売られている野菜を見ても、旬の野菜は「おいしそうだな」と思いませんか?それだけ、体が欲しているということですよね。「ぶら下がりもの」といわれる夏のナスやキュウリには、体を冷やす作用があり、水分もたっぷり含まれています。こういった野菜を暑い日に食べると、体がほっとしますよね。一方で、冬の根菜類には体を内側から温める作用があるなど、旬の野菜は、その季節に沿って健康をサポートしてくれるものです。

Q3 野菜ソムリエになり、ご自身が変わったこと、広がったことなどがあれば教えてください。

野菜を学んで、「じゃあ、季節感を大事にする料理って何かな」と考えると、やはり和食だと思いました。そこで懐石料理を勉強して、講師の免状をいただいて、生徒さんに教える立場になりました。すると、今までチャレンジしていなかった食材にも手が伸びるようになり、穴子なども自分でおろすようになって、料理がますます楽しくなりましたね。

Q4.食に携わる者として、一番大切にされていることは何でしょうか。

素材の味を活かすことです。生徒さんにもよく話すのですが、レトルトの袋の味より、お袋の味を伝えていきたいですね。調味料もできるだけ添加物の入っていないものを吟味して、本物を使っていただきたいと思っています。生徒さんには、よく、だしをとるのが面倒と言われるのですが、日本のだしは、お湯を沸かす間にとれてしまうので、決して手間がかかるものではありません。そういったことをお伝えしながら、自分でもなるべく、質のいい、旬のものを摂るように心がけています。旬のものは、スーパーでもたくさん出回りますから、実は家計にもやさしいんですよ。

Q5.体によいとされる野菜の基本的な食べ方を教えてください。

・緑黄色野菜は少量のオイルと一緒に

緑黄色野菜のニンジンや菜の花などは、脂溶性のベータカロテンが含まれているので、オイルを加えて料理することで効率よく栄養素を摂取できます。炒めるときはもちろん、和え物でも少し回しかけるだけで、コクも出ておいしく健康的にいただけますよ。

・一気に作ってアレンジ!ビタミンCたっぷり野菜スープ

さまざまな野菜に含まれるビタミンCは水溶性で水に溶けやすいので、ミネストローネなどスープにして煮汁ごといただくといいですね。私は、鍋いっぱいにスープを作って、初日は塩味、翌日はトマト味、その翌日はカレー味にしたりして、味を変えて楽しんでいます。その都度、一から全部作るのは大変ですから、ある程度作り置きがあると、それにちょっとお肉だけ足したりすればいいので、献立作りが楽になりますよ。

・野菜の甘みを引き出す塩

炒めるときは、お塩をパラッと振ってから炒めると、水分が出て、野菜の甘みも出やすくなるのでおすすめです。私は、野菜にはシンプルに塩で調理するのが好きですね。たとえば、キャベツをざくざく切って軽く塩もみし、そのままでも食べられますし、翌日はレモンとオリーブオイルを加えて簡単なサラダにしたり、その翌日は卵を加え蒸し焼きにして巣籠り卵にしたりしています。最初がシンプルだと、その後、アレンジがしやすいですよね。

・自然の色みで食欲をかきたてる

茶系の煮物には、サヤインゲンをさっと茹でて添えると、お皿がぱっと明るくなりますよね。野菜の色みをうまく使うと、目にもおいしそうに見えて、食べるのが楽しくなります。ちょっとしたひと手間で、栄養的にも、見た目にもずいぶん変わりますので、ぜひ取り入れてみてください。

Q6.1日に摂りたい野菜の量は?

野菜には緑黄色野菜と淡色野菜の2種類があり、切ったときに中まで色がついているものが緑黄色野菜※です。量として推奨されているのは、1日に350グラムの野菜を摂ることで、そのうち120グラムは緑黄色野菜で摂ったほうがいいとされています。350グラムというと、生野菜でしたら両手に載るくらい。加熱したホウレンソウのお浸しなら、小鉢1皿で70グラムくらいなので、これを1日5皿摂ると350グラムになります。こうお話すると、けっこう大変だな、と思いますよね。そんなとき、さきほどお話したミネストローネスープなどであれば、一気にたくさんの野菜を摂ることができます。
※厚生労働省では、「可食部100g中にβカロテンが600㎍(マイクログラム)以上含まれる野菜」と定めている。

Q7.野菜が苦手という方や子どもたちにはどのように対応すればよいでしょうか。

私自身、子育てをしてきた経験から言えることは、小さい頃に食べなかったからといって、ずっと食べないわけではないということです。自分が子どもの頃を考えても、昔は食べられなかった苦いお野菜が、大人になるとおいしく感じられたりしますよね。ですから、お子さんが食べないからといって食卓に載せないのではなく、普通に出して、お父さんとお母さんが「おいしいね」と食べていることが大切です。あまり神経質にならず、食べても食べなくてもいいから、「この時期はこの野菜がおいしいのよ」、と旬のものを出して、食べたら褒めてあげましょう。そうやって自然に任せつつ、なるべく多くの種類の野菜をスープなどでさりげなく食べてもらうのがおすすめです。

野菜ソムリエ/調味料ジュニアマイスター NPO法人青果物健康推進協会ベジフルティーチャー井上憲子さん


野菜ソムリエ/調味料ジュニアマイスター NPO法人青果物健康推進協会ベジフルティーチャー井上憲子さん


野菜ソムリエ/調味料ジュニアマイスター NPO法人青果物健康推進協会ベジフルティーチャー井上憲子さん

野菜ソムリエ/調味料ジュニアマイスター NPO法人青果物健康推進協会ベジフルティーチャー井上憲子さん

Q8.これまでで、一番記憶に残っている食についての思い出を教えてください。

毎年、春になると、実家の竹藪で祖父が筍を掘ってくれたことを思い出します。掘りたての筍で、母が筍ごはんや若竹煮を作ってくれました。小学生の頃、その筍の皮でおにぎりを包んで、遠足に持って行ったこともいい思い出ですね。今でもこの時期になると、若竹煮や筍ごはんを作ろうと思います。今では、さすがに自分で掘ることはなかなかできないですけれど(笑)。

プロフィール

井上憲子 プロフィール

東京都出身。野菜ソムリエ/調味料ジュニアマイスター
NPO法人青果物健康推進協会ベジフルティーチャー
SEとして勤務していた会社を出産を機に退職後、家族との食事を大切にしたいと料理の勉強を続ける中で野菜ソムリエを取得。妻&母&主婦の立場に立ったレシピの提案やセミナーを開催。
高知野菜サポーター、近茶流懐石講師としても活躍中。

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